訪問歯科衛生士ってどんな仕事?

高齢社会に伴って、近年需要が高まっている訪問歯科。

外来の経験しかないけれど、訪問も気になっている…という歯科衛生士さんも多いのではないでしょうか。

そんな衛生士さん向けに、訪問歯科について記事を書きました。

参考になれば幸いです!

訪問歯科での仕事の流れ

まずは訪問歯科での1日の仕事の流れについて説明していきます!

細かい時間や内容は医院によってそれぞれですので、一つの目安としてお読みください。



8:30歯科医院出勤

  • 着替え
  • カルテや予定表を見て一日の処置や治療の確認
  • 必要な機材、道具の準備と車への搬入

朝の準備は割とバタバタしますよね。

ですがここで忘れ物をしてしまうと訪問先で予定していた治療ができなくなってしまうため、念入りなチェックが必要です。

外来よりも、時間に余裕をもって出勤することが必要かもしれません。

9:00出発

準備を済ませたら、車で訪問先へ出発します。

衛生士が単独で訪問する場合もありますが、多くの場合Dr.や他の衛生士と数名で訪問することになります。

中には訪問専属のコーディネーターを雇っている医院もあり、その場合はコーディネーターも一緒に現場へ同行、車の運転やアポの管理、施設スタッフとの情報共有などを行います。

歯科で訪問するのは

  • 高齢者や障害者の居宅
  • 高齢者施設
  • 障害者施設

のどれかになり、1日のうち4~5件訪問することもあれば、丸一日同じ施設内で複数の患者さんを診て回ることもあります。医院さんや、その日のスケジュールによって変わってくるでしょう。

9:30診療開始

訪問先に到着したら、素早く車から荷物を下ろし、診療に入ります。

施設の場合は施設スタッフに、居宅の場合はご家族や本人に、その日の体調や変わったことがないか確認しておきます。

診療中、歯科衛生士の仕事の流れは以下になります。

  • 患者さんへ挨拶、診療の説明、雑談等で緊張を和らげる
  • 体調・口腔内の確認→ここで変わったことがあればDr.チェック
  • 口腔ケア
  • 口腔機能訓練(ここまでを約20分以内に終わらせる)
  • 治療予定があればDr.を呼んで治療開始・アシストに入る

施設では、この作業を繰り返して複数の患者さんを診て回ります。

11:30カルテ記入

施設入居者さんたちの昼食時間に合わせて11:30ごろには診療を終わらせ、書き物を行います。

訪問歯科では外来よりも書き物がやや多く、院外に持ち出して記入する仮カルテ、患者さんのケアマネージャーに提出する歯科衛生管理指導書、ご家族への報告書などの記入があります。

特にケアマネジャーやご家族、外部の人が読むものは言葉遣いや用語の使い過ぎにも気を付けながら記入していく必要があります。

12:30お昼休憩~午後診療

訪問歯科でのお昼休みは、医院によって様々な取り方があります。

一度医院に戻って休憩することもあれば、ファミレスなどで皆で外食する車の中でお弁当を食べたり眠たりする等…本当に様々です。

外来に勤めていると院内でお弁当を食べることが多いと思いますが、訪問ではこのように外食ができたり自由度が高く、良い息抜きになって楽しいかもしれませんね!

そして1時間~1時間半の休憩を取った後、また訪問先に出向き診療していきます。

17:30帰院

お昼同様、施設では夕食の時間があるため、だいたいこのくらいの時間には診療を終わらせて帰院します。

帰院後やることはこちらです。

  • 片付け、洗い物、滅菌
  • 印象があれば石膏流し・デンタルの現像
  • 残りの書き物の記入
  • 明日の準備

次の日慌てないように、なるべくここで準備をしっかりしておきましょう。

18:00帰宅

以上になります。

いかがでしょうか?外来とは全く違う一日の流れですよね。

医院によっては訪問が終わった後、まだ終わってない外来のアシストに入らないといけない所もありますので、面接の際などに確認しておくといいでしょう。

訪問歯科で働くメリット

訪問は、院内とは全くやり方が違うからこそ、新たな学びやスキルアップにつながることも多いです。

訪問歯科ならではの働くメリットをご紹介します。

コミュニケーション力が上がる

訪問歯科では、継続的に患者さんの治療を進めていくため、一人の患者さんと長期的に付き合っていくことになります。

ですので患者さん一人ひとりとしっかり向き合い、信頼関係を築くことが大事になってきます。

認知症の高齢者や、普段接することの少ない障害者の方と会話することで、歯科衛生士に必要なコミュニケーション力が上がっていくのです。

また、患者さんのご家族やケアマネージャー、かかりつけの病院とも連携をとりながら治療を行っていくため、説明力や傾聴力も身についていくでしょう。

珍しい症例などを経験できる

外来の患者さんとは違い、訪問で診る患者さんは全身疾患の既往がある場合が多く、口腔内の状態も様々です。

重度の口腔乾燥症や、痂皮、口腔がんなど、外来ではなかなか診ることのできない症例も多く経験できいます。

また、外来ではあまり行わない口腔機能訓練やリハビリなどの知識・技術も身に付きます。

プライベートが充実する

一日の流れでお伝えしたように、訪問先の施設では食事の時間などが決まっているため、訪問歯科では残業が少ない傾向にあります。

最近夜遅くまで診療している歯科医院も多いですが、訪問の場合は夕方早めに帰宅して、プライベートを充実させることができますね。

アポイントの調整も外来よりは簡単なので、休みも取りやすいかもしれません。

患者さんの人生に寄り添える

外来でも患者さん一人一人に寄り添い、口腔内や生活習慣の改善のために尽力することは歯科衛生士の役割ですが、訪問ではさらにその役割が強くなります。

持病をお持ちの患者さんや寝たきりの患者さんもいます。

そんな患者さんの生活を少しでもより良くするため、衛生指導や口腔ケアを行うのです。

訪問では、1週間前に伺った患者さんが次の週に亡くなっている、ということも珍しくありません。

最期の時までどんな患者さんにもしっかりと寄り添い、お口の中を清潔に保ち、なるべく楽しくおいしくお食事をとれるようにお手伝いする。

そんなやりがいのある仕事なのです。

感謝される

歯科で訪問する患者さんは、施設で暮らしていてなかなか家族や外部の人に会えなかったり、家族が近くにおらず体が不自由な中独居していたり、寂しさを抱えていらっしゃる方が多いです。

なので歯医者さんが会いに来てくれることを心待ちにしている方もたくさんいます。

週に一回、数十分だけでも、楽しく歯科治療や口腔リハビリをみんなで行う時間が患者さんにとっては大切なのです。

患者さんのために一生懸命やっていれば必ずそれは伝わり、感謝されることでしょう。

訪問歯科のここが大変



訪問歯科で衛生士として働くメリットをお伝えしましたが、やはりどんな仕事も大変なことはあるでしょう。

ここからはそんな訪問歯科で働く大変なポイントをお伝えしていこうと思います。

拒否の強い患者さん

訪問では、家族や施設スタッフなど、第三者から依頼されて診療を行うことも多いです。

その場合、「頼んでもないのに来るな!」と治療拒否する患者さんもいます。

ですがそういう方に限って口腔内は悲惨な状態なことも…。

なるべく説得しますが、認知症で判断能力がない方や会話困難な方の場合、スタッフ数人で暴れる患者さんを取り押さえながら治療を行うこともあります。

患者さんの健康のため仕方がないのですが、そういう診療は体力的にも精神的にも大変です。

アポイント管理に注意が必要

患者さんは一日中施設や自宅にいるとはいえ、実は多忙なのです。

訪問歯科以外にも訪問看護やマッサージ、入浴や面会、レクリエーションなど分刻みでスケジュールが埋まっている日もあります。

患者さんを施設内で複数診る場合は、一人ひとりのスケジュールをしっかり確認しアポイントを組まなければ、予定時間内に診療が行えなかったり、その日は診療中止になてしまうことも。

責任の重さ

持病をお持ちの患者さんやご高齢の患者さんは、診療の際に細心の注意を払わなければなりません

たとえば診療のためお部屋を移動する際、誤って転倒させてしまったら大事件です。ご高齢の方は骨も筋力も弱く、そのまま寝たきりになってしまう方もいます。

治療で麻酔を使う際も、血圧や脈拍、全身疾患や服用している薬など前もって十分に確認しておかなければ、重大な医療事故につながりかねません。

このように歯科治療で行う行為が患者さんの生死やQOLに深く繋がっていますので、やりがいもありますがとても責任の重い仕事です。

ですのでDr.や他の衛生士、施設スタッフやケアマネ、かかりつけ医とチームで情報共有しながら安全に診療を行っていく必要があります。

まとめ

いかがでしたか?

訪問歯科衛生士の仕事内容についてお伝えしてきました。

訪問歯科にチャレンジしてみようかな?と思っている衛生士さんのお役に立てれば幸いです。

筆者は約4年間訪問歯科で歯科衛生士をやっていましたが、とても楽しい毎日でした。

もともと外来のせかせかしている雰囲気があまり得意ではなかったのもありあすが、訪問で高齢者や障害者の患者さんたちと楽しく、ゆったりと診療できる空間が大好きでした。

少しでも訪問歯科が気になっている方は、私はとてもおすすめなので是非一度トライしてみてほしいです。

それではここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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